国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

古文単語は意味分類の表を使って理解しよう! 古文単語の覚え方 単語2「美をあらわす単語」

というわけで、古文単語を進めてまいります。

単語は覚えれば文章が読めますし、テストでも点がとれます。センターの選択肢だって、単語がわかれば、「ここをこう訳してないから×」と自信を持って選べます。

今回は恋愛ものには必須。「美」をあらわす単語。ではいきましょう!

 

 古文はほとんど恋愛もの

古文なんてほとんど恋愛がらみです。

だから、「美」をあらわす単語がわからないと話になりません。

相手は立派な男です。だから「評価」「不評価」をあらわす単語もわからないと男の評価はできません。

たいていは片思いです。だから「不快な思い」をあらわす単語は山ほどあります。

「日常生活」を表す語でも特に「恋愛関係」の単語は多いです。

「時間を表す語」「場所を表す語」。「程度を表す語」も必要です。

病気になって死ぬ話もここに加わります。だから「病気や死にまつわる語」も必要です。

舞台は宮中。だから「宮中にまつわる語」や「身分にかかわる語」「敬語」も必要ですね。

出家もよくします。だから「仏教にまつわる語」も覚えないと…

まあ、こんな感じ。

残ったのが「学問に関わる語」ですが、これは恋愛もの以外といってもいいかもしれませんね。

知らないとまずいし、とりあえず、単語早くやりたくならないですか?

では行きましょう!今日は美を表す語です。

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美を表す単語

これから説明していきますが、この表を再現できるようなイメージ覚えてください。何も見ないで、この表を思い出してつくる感じ。

単語がいえればいいということですね。

セレブのイメージの美しさ~きよし・いう・やさし

美しいの最上級は「清し」です。これがもっとも美しい感じ。でも、これは、「神々しさ」「後光が差す」イメージです。「清げなる僧」なんていう風に使われますから、かなり精神性が入ってきますね。

身分の高さとこれをみると、「艶」とか「いう」「やさし」になります。「いう」は「優」。「やさし」は「優し」で、「優美」つまり、セレブな金持ちのイメージです。身分が関係してしまうのですね。

「やさし」の語源は、「痩せし」です。つまり、「痩せ細るような気持ち」をベースにしています。ポジティヴに言えば、それをいたわり、「優しい」ですが、ネガティヴだと、そのまま「つらい」というような気持ちになります。

動詞にすると「やさしむ」で、それを「いたわる」ような感じです。

身分だけなら、「やんごとなし」「あて」、評価をいれるなら「めでたし」「はづかし」なんかと一緒。でも、これらは「美」の感じはないです。身分が高くて上品な、というところで「やさし」です。

で、この「やさし」ですが、語源的には「身もやせ細るような」という意味があります。「相手が素晴らしくて」というのが、この「優美」ですが、単純に意味をとると、「はづかし」にかなり近いです。「つらい」とか「気が引ける・恥ずかしい」ですね。

 

守りたくなる小さくて弱いものの美しさ~うつくし・らうたし

じゃあ、かわいい女の子って何?

浮かぶのは、「うつくし」と「らうたし」。

うつくし=慈しむ、が語源です。

らうたし=労甚し、で、労力を甚だしくかけること。

つまり、両方とも、小さくて弱いものを労力をかけてなんとかしてやりたい、という感じ。守ってあげたい感じ。

だから、赤ちゃんなんです。竹取物語は「うつくしき女児」ですが、当たり前で、巻き髪した化粧ばっちりの赤ちゃんはいないからです。

古文の先生が、「うつくし」を「かわいい」とこだわるのもこれが理由。

広瀬すずちゃんが、かわいいかうつくしいかは主観でどっちでもいいじゃん、と思うのは、「かわいい」がこの単語の役としてぴたっとはまっていないから。

だから、外見の美でこれらの単語を使っていないんですね。

 

こどもっぽさと大人っぽさ、親しみやすさときちんとしている感じ~うるはし・なつかし・なまめかし

美を表す単語で種類分けをしていいなら、

「なまめかし」と「うるはし」が浮かびます。

なまめかし=「生」「めく=ぽい」という感じですので、未熟っぽいということになります。ほめると、「若々しい」「みずみずしい」という感じ。ピチピチ。です。まれにネガティブになって「未熟」。「生坊主」「生学生」なんてきたときは美のイメージはなくなって、半人前ということです。

うるはし=麗はし、ですが、「容姿端麗」を思い浮かべてもらうといいです。これは「整った美しさ」「モデルさんのイメージ」です。結構美しそうですが、残念ながら、性格的な部分も入り込んで、「ちゃんとして近寄りがたいイメージ」。「クラスにいるような」と形容されるアイドルの真逆。高嶺の花です。

いろいろな意味でちゃんとしている感じですから、たとえば、言葉遣いとか。「〇〇さん、〇〇してくださいませんか。」とか来たら、距離感がありますね。

この逆で考えると、

「しどけなし」と「なつかし」が入ります。この二つには美の概念はないですね。距離感とだらしなさです。

しどけなし=だらしない、というイメージ。制服のボタン、あけたり、リボンをゆるめたりすると、「だらしない」けど「近づいていいのかな?」みたいな感じになっちゃいます?

なつかし=懐かし、ですが、「懐=ふところ」「懐く=なつく」なんていうように、距離感が近づいて、ボディタッチが増えていく感じ。名前呼び捨てにして、袖口つかんで、「〇〇、マックいこ。」みたいな感じです。

 

じゃあ、本当にかわいい女の子っていうのは?~あはれ・をかし

となると、要するに現代の「美しい」「かわいい」がないんですね。古文は擬音的なイメージや名詞的なイメージで、論理的な分類ではないからです。

というわけで、ひとつが「にほふ」

におふ=匂いだけでなく、見た目にも使うんですね。これがくれば、ルックスがよいことは明らか。

もうひとつが、「あはれ」と「をかし」

あはれ=じーん

をかし=くすっ

ですが、きれいな、かわいい女の子を見ると、じーんときたり、思わず笑みがこぼれたりりますよね?

あはれ=イメージとしては、物静かで、口数が少なくて、見ていて、涙がでちゃう感じの美しさ。病弱でもこっちかな。

をかし=元気で、快活で、友達になりたいような感じの美しさ。

だから、大学入試で、あはれ・をかし、が出たら、たいてい、「美しい」が答えだと思います。意外と「をかし」あたりが、現代語のかわいいに一番近いような気がします。だって、いろいろなものに「をかし」っていいますしね。

見た目だけなら「めやすし」=「目安し」で、見てて安心できる感じでしょうか。

 

これで今日から、古文に出てくるきれいな女の子を見落とすことはありません。きれいな女の子を見落とす恋愛ものなんてもったいないですよ。