国語の真似び(まねび) 受験と授業の国語の学習方法 

中学受験から大学受験までを対象として国語の学習方法を説明します。現代文、古文、漢文、そして小論文や作文、漢字まで楽しく学習しましょう!

「言いたいこと=例=言いたいこと・別の話」の法則 評論・論説の読解 主張のつかみ方、要約の仕方 本文をマークする方法

今日は、現代文、中学入試・高校入試では単純に国語、ということになりますが、評論・論説文の読み方、構造のとらえ方について、説明します。

 というわけで、実際の読解に入っていきましょう。基本的に中学入試も大学入試もやることは一緒だと思いますが、小学生と高校生が同じ説明で大丈夫か、という問題が出てきます。小学生の場合、これから書くような理論的な理解はほどほどで、大事なのは具体的に何をするか、という感覚になるでしょう。大学受験の場合は、やはり、受験生が意図的にどのように読むかということを理解しないといけないと思います。特に早稲田あたりの合格をとろうとするなら、どうしてもこうしたことを「意識」しないと、正答にたどりつくかどうかが微妙になると思います。

これから、文章の把握の仕方について、基本的には大学受験ベースで書き進めます。中学受験、高校受験の場合は、保護者の方に理解していただきながら、具体的な作業に入っていけるといいと思います。

今日は、この「言いたいこと」を構造からつかむ、という話だけを進めます。ここから、内容理解に入り、また設問に答えていくわけですが、それについては、長くなりますので、またの機会にしたいと思います。

 

 「言いたいこと」をつかむ

まず、当たり前のことですが、文章には「言いたいこと」があります。小説とは決定的に異なり、評論・論説文では、これが明確であるということです。何しろ、わかりやすく「言いたいこと」を伝えるために、文章を書いているわけですから、これがつかみにくい、なんてことは本来あり得ないのです。

小説の場合は、「言いたいこと」が比喩であったり、描写であったり、行動であったりに託されます。もっというなら、あえて「隠す」わけですね。だから、これを読み解くには手間がかかりますし、唯一絶対の解答というわけにはいかなくなるのです。

では、どうして、評論の「言いたいこと」がつかみにくいのでしょうか。それは、すでに書きましたが、「国語」だと思ってしまっているからです。本来、国語ではなく、作者の専門=テーマが決められているはずですし、もともと出版した本には、ピッタリのタイトルがついているはずですし、そして読む人だって、そのタイトルとテーマを意識して読んでいるはずなのです。だから、本文=講演会のテーマについて、わかっていないなんていないわけですね。

ところが、国語の試験では「国語」だと思っているから、このテーマやタイトルが意識されにくい。筆者は「言いたいこと」を伝えるために書いているのですから、わかりにくいなんてことはないはずなのですが、やっぱり読む側が意識していないというのが大きな原因であるようです。

 

 読む前に「言いたいこと」をつかむ。

つまり、まず本文を読む前に「言いたいこと」をつかんでおきたいですね。

  • タイトルをしっかり意識する。
  • 選択肢の問題なら、最後の本文把握の選択肢に目を通す。
  • 第一段落で、何の話が始まるかつかむ。
  • 最終段落で、どんなまとめになっているかつかむ。
  • 記述の問題の場合、傍線部が引かれているところをつないで、「言いたいこと」と論旨展開を考える。

こんなところでしょうか。簡単にいうと、これがどんな話かがわかるだけでも、ずいぶん読みやすくなるはずなのです。

 

 「言いたいこと」は「X=A」で表せる

さて、ここで「言いたいこと」をもう少し具体的な表現にしていきましょう。

言いたいことは

X=A

で表します。

○○は××だ

ですね。

「=」は「は」ととらえるとわかりやすい。

○○について、それを××だと考えている

というのが、

X=A

です。

つまり、ここでのXは、テーマ=「簡単にいうと何の話?」「何の先生?」というのに似ています。

たとえば、美術であったり、音楽であったり、政治であったり、差別であったり、近代都市であったり‥

これがXにあたるものですね。

しかし、これは「言いたいこと」ではありません。

Xは××だ

となって、はじめて「言いたいこと」と言えます。

テーマ「X」が「A」、つまり何なのか、これで「言いたいこと」になるわけです。

第一段落から、「XはAなのである」と示す評論もあれば、第一段落では「Xは一体どういうものなのだろうか」なんて投げかける文章もありますね。

でも、後者であったとしても間違いなく、第二段落以降では、その結論を示しはじめます。なので、いかに最初でそれをつかめるかにかかってくるのです。

ちなみにですが、Xは短い一言とは限りません。

たとえば、次のような文章の場合、どうでしょうか。

現代日本の音楽にはたらく見えない力を考えたとき、それはふたつある。媒体と教育である。まず、媒体はどのように働くだろうか。

この場合、まずテーマ「X」として、

現代日本の音楽

という言葉が見つかると思います。

では残りは、Aといえるでしょうか。いえ、Aではないですね。

おそらくこの文章は

現代日本の音楽に働く見えない力

についての文章ですね。

では、最後に出てくる「媒体と教育」は、A=言いたいことと言えるでしょうか。

実はこれではだめですね。

最後が「どのように働くか」と書かれているからです。

つまり、

X「現代日本の音楽に働く見えない力であるとことの媒体と教育」

A「どういう働きをしているか」

ですね。

そして、文章というのはこの直後から「A」の説明を始める。そして、すぐに、「XはAだよね」とまとめる。

このようにできているのです。

言いたいこと=例=言いたいこと、別の話‥

これを論理的にまとめると、こうなります。

「X=A」だよね。

たとえば、「X’=A’」なんてことがあるよね。

つまり(このように)「X=A」だよね。

という感じです。

具体例は、言いたいことにサンドイッチされる

これが重要な法則です。

たとえば、「たとえば」という接続詞を見つけたとします。そのあとは、おそらく、X=Aの具体例です。したがって、ここ全体を(   )でくくります。そうなると、その前後は「言いたいこと」ですから、その部分(段落全体のこともあれば、1行のこともあるでしょう)を、□でくくります。

もちろん、Xだと思う言葉を□でくくり、Aだと思うところに線をひきます。

イメージがわきましたか?

 

 答えをみつける

これができると答えが見つかる可能性が高くなります。

なぜなら、前後の□がイコールだからこそ、論理関係が成り立っているのです。

わかりますか?

たとえば、最初の段落の「X=A」に傍線が引かれていたとします。答えはどこかといえば、それは例の(  )をとばして、次の□ではないでしょうか。

たとえば、言いたいこと=例=言いたいことの最後の一段落に、空所があったとします。それを本文から探すとするなら、例の(   )をとばして、最初の□の中の呼応を探すのではないでしょうか。

東大などの現代文になってくると、これだけで置き換えるのでなく、わかって自分の言葉で説明する、なんてことも必要になってきますが、たいていの私立大学やセンターはこんな作業で、そこそこキーワードがつかめ、2択ぐらいまでは持っていけると思います。(余計なことですが、共通テストの試行調査を見る限り、共通テストでは、より、理解力=わかる力にシフトしていくように見えます。)

そうすると、この

言いたいこと

言いたいこと

という流れのあとはどうなると思いますか?たいていは別の話になるのです。

たとえば、

日本代表の守備は問題がある。

たとえば‥とくれば、X=日本代表の守備の言いかえ、つまり、ディフェンスの選手の名前などが入り、A=問題がある、の言いかえ、つまり、よくないことが挙げられます。

そうすると、

つまり、日本代表の守備には改善点が多い

なんて感じになりますよね。

さあ、そのあとは、何の話をするか?もちろん、さらに守備の話を続ける可能性もなくはないですが、それだったら、

さらに、代表の守備の問題点をもうひとつ示そう

ぐらい書いてほしいですよね。

ないとすれば、

・守備の具体的な改善案

・攻撃についての論評

だったりしないでしょうか。

というわけで、たいていは次から別の話=もちろん、おおざっぱなX=Aは同じ中で話が進んでいくわけです。

先ほどの文章です。

現代日本の音楽にはたらく見えない力を考えたとき、それはふたつある。媒体と教育である。まず、媒体はどのように働くだろうか。

現代の日本の音楽に影響を与える見えない力とは媒体と教育なのだが、

1 まず媒体について、考えよう

となるわけですね。

だったら、おそらく次は、

2 次に教育について、考えよう

とくるはずです。Aの部分のキーワードが拾えますよね。

その次はどうなるでしょうか。

おそらく、

3 現代日本の見えない力であるところの媒体と教育によって○○のように影響が与えられている。

とまとめると思いませんか?

そうすると

4 見えな力は××についても影響を与えるはずだ

なんていう風に進んでいくはずです。

 「構造」を考える

逆にいうなら、もしよくわからないなら、ふっとばすというのも手です。

Aの話からBの話にうつるとするなら、たいていは、

「A段落の最後に、次のBを示しておくか」

「B段落の最初で、今までAについて話をしてきました、のようにまとめる」

ことが多いのです。

次段落の冒頭が指示語「この○○」のように来た時は、要は今まで○○の話をしてきたんだよ、とまとめているわけで、先にそこを読んでから読み返す、という手があります。

 

小学生に

ちょっと、ここまで高校生向けの話が多かったように思います。小学生だったら、何をする必要があるかというと、

意味段落でわける

練習をさせるといいでしょう。

ちなみに形式段落ごとに要約するというのはあまり勧めません。

文章は

言いたいこと

言いたいこと

を、

形式段落ごとにやるパターンと、3段落や2段落で行うパターンがあるからで、国語力で重要なのは、いかに

言いたいこと=X=A

言いたいこと

の構造をとらえるかであって、全段落でこれをやると、ただの要約=しかもコピーの練習になってしまうからです。

つまり、形式的なことではなく、この文章は何を言っているのか、と考えさせることが重要です。

なので、意味段落の境目を見つけるような読み方をさせることが有用で、逆に形式段落ごとに要約するというのはあまりおすすめしません。

というわけで、今日はこのあたりにします。

今度は、実際にどう得点をとるか、という話にしていくつもりです。